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 ■計算科学のもう一つの目的(研究室セミナー概要より)




  シミュレーション研究は理論研究、実験研究に加わる第三の科学
 (研究の手法)として産声をあげた。これにより(程度の差こそあれ)
 どのような複雑な系の振る舞いも一応解くことが可能となってしまっ
 た。この事が真であれば、それだけでも大変な成果であることは明
 らかである。現時点では困難ではあるが、やがて蛋白質のダイナミ
 ックスが第一原理的な計算によっても解くことができるようになり、蛋
 白質間の相互作用や電子移動の問題なども解明できる。細胞間の
 エネルギー移動、新陳代謝なども計算可能な時代がやがてはくるか
 も知れない。
  バイオ関連のみならず、高分子材料、無機材料の分野においても
 コンピュータ上で物質設計が可能となり、多くの試行錯誤的な実験を
 行わずとも、はるかに低いコスト/パーフォーマンスでコンピュータが
 その代わりを行ってくれる。
これぞ科学・技術先進国の威力の見せ所
 と言えよう。
  しかしながら、コンピュータシミュレーション研究がもたらす福音は
 これだけではない筈である。むしろ、ここでは(あまり多くの人が明瞭
 には言ってこなかった)もう一つの事を強調したい。
 階層の科学

階層 スケール 対象
T 〜1nm 科学
U 〜100nm ナノ科学
V 〜μm セミマクロ
W 〜mm マクロ
X 〜m 人間
 超階層(ゆらぎ)の科学

    -非平衡、非線形、非摂動の科学-
  (例)電子・原子・分子から
     凝集状態、固体(表面・界面・粒界・・・)へ
     蛋白質集合体、結晶(同)、細胞へ
   量子力学、古典力学、統計力学、流体力学、
   電磁気学、波動力学、光学、種々の輸送方程式
   (階層物理学)の融合:キーワードはゆらぎ
   (臨界現象は特殊)

    ゆらぎの特徴
     S = k・log W
     F = U‐TS
     Cv= T(ΔS/ΔT)v
     S = ‐(ΔF/ΔT)
     ∝<E-<E>>**2
     小さい量
 まとめ

  計算科学は

   (1) 複雑系の解明に不可欠であるが、

   (2) 超階層の科学にこそ真価を発揮する。

     非平衡、非線形、非摂動では
     ゆらぎは必ずしも小さいものとは限らない。
     このゆらぎこそが異なる物理時間・空間スケールをつなぐものとなり、
     超階層科学の最重要物理量である。
     臨界現象、擬似臨界現象、オーダーNのゆらぎ
     同じ趣旨で、励起状態を含めた物理・化学が興味ある。