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2.14 TSPNSETの機能

NSPIN=4のときに有効なフラグである。 システム全体の絶対的なスピン方向を$z$軸 などにそろえるときに用いる。NBEG=0,1のときに、 MDが始まる前に1回だけ波動関数を変換する。 KROT=1および2が有効である。 KROT=2KROT=1を連続して用いたい場合 でも2回のジョブに分けて行わなければならないようになっている。 ver25からは、KROT=3も使用可能となっている。このフラグが 立ったときには、NBEG=0,1で波動関数を読みに行った後、 ファイルspnrot.datが読まれて、波動関数を変換する。 ファイルは、sample.dat.shに書くようになっており、 下記のように入力する。ただし、読み込まれるのは、1行目だけである。

KROT=3の場合は、回転の仕方を制限して2回の回転を連続的に行なう。 1回目の回転でシステム全体の絶対的なスピン方向を$z$軸にそろえ(SX,SY,SZ に回転前の磁気モーメントを指定する)、2回目の回転でSXX,SYY,SZZで指定した 磁気モーメントのy成分が消えるように回転させる。

cat > ${tmpdir}/spnrot.dat << end
 2  -5.660817  2.830552  -0.039051 0.0 0.0 1.0 KROT SX SY SZ SXX SYY SZZ
 1   1.0       0.0        0.0      0.0 1.0 0.0 KROT SX SY SZ SXX SYY SZZ
 3  -5.66 2.83 -0.03 -1.66  0.83 -0.01         KROT SX SY SZ SXX SYY SZZ
end

KROT=2の場合、全系の磁気モーメントを$z$軸方向にするために用いられる。 (SX SY SZ)には、変換前の全系の磁気モーメントを指定し、(SXX SYY SZZ)(0.0 0.0 1.0)すれば、変換後全系の磁気モーメントは$z$軸方向に向いて 出力される。 この操作によりxおよびy方向の全磁気モーメントがゼロとなる。コリニアー磁気構造 の場合には、各原子の磁気モーメントのxおよびy成分もゼロとなっているはずである。

KROT=1は、$z$軸回りの回転変換を行うときに使う。 ノンコリニアー磁気構造の場合には、$z$軸方向のモーメントを変化させずに、 $z$軸回りの回転を行い面内のモーメントの方向を軸方向にそろえておくと便利で ある。(SX SY SZ)には、方向をそろえたい原子のモーメントを指定する。 KROT=2の場合の原子の磁気モーメントの出力結果を指定すればよい。 そのとき(SXX SYY SZZ)には、$y$軸方向にそろえたいたいときは、 (0.0 1.0 1.0)としてすればよい。

実際には、上記の操作は、波動関数の位相を変換して行っている。 その操作の定義は、以下の様である。 変換前の波動関数と変換後のものをそれぞれ、

$\displaystyle \left( \begin{array}{c} \psi_{1} \\
\psi_{2} \end{array} \right)$ $\textstyle ,$ $\displaystyle \left( \begin{array}{c} \hat{\psi}_{1} \\
\hat{\psi}_{2} \end{array} \right)$ (13)

とすると変換は、
$\displaystyle \left( \begin{array}{c} \hat{\psi}_{1} \\
\hat{\psi}_{2} \end{array} \right)$ $\textstyle =$ $\displaystyle V
\left( \begin{array}{c} \psi_{1} \\
\psi_{2} \end{array} \right)$ (14)
$\displaystyle V$ $\textstyle =$ $\displaystyle \left( \begin{array}{cc} e^{i\varphi_{0}/2} \cos(\theta_{0}/2) &
...
...\sin(\theta_{0}/2) &
e^{-i\varphi_{0}/2} \cos(\theta_{0}/2)
\end{array} \right)$ (15)

である。 KROT=1の場合は、磁気モーメントベクトルに対して
$\displaystyle \left( \begin{array}{c} \hat{S}_{x}   \hat{S}_{y}   \hat{S}_{z} \end{array}\right)$ $\textstyle =$ $\displaystyle \left( \begin{array}{ccc} \cos{\varphi_{0}} & \sin{\varphi_{0}} &...
...y} \right)
\left( \begin{array}{c} S_{x}   S_{y}   S_{z} \end{array}\right)$ (16)

の関係式より$\varphi_{0}$を求める。ここで$S_{\alpha}$は、変換前の 磁気モーメントベクトル、 $\hat{S}_{\alpha}$は変換後の磁気モーメントベクトル であり、$\theta_{0}=0$を仮定している。KROT=2の場合は、 磁気モーメントベクトルに対して
$\displaystyle \left( \begin{array}{c} 0   0   \hat{S}_{z} \end{array}\right)$ $\textstyle =$ $\displaystyle \left( \begin{array}{ccc} \cos{\theta_{0}} \cos{\varphi_{0}} &
\c...
...y} \right)
\left( \begin{array}{c} S_{x}   S_{y}   S_{z} \end{array}\right)$ (17)

の関係式より $\theta_{0}$$\varphi_{0}$を求める。


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Copyright (C), Tatsuki Oda (oda@cphys.s.kanazawa-u.ac.jp, Kanazawa University)