熱平衡状態の分子動力学(MD)を考える。 力学量(温度、内部エネルギー、圧力など)がそれぞれの平均値の回りで 揺らぎ始めたとき、熱平衡に達したと考える。
(1)熱平衡状態
通常、
をなるべく大きくとるように設定するため一部の粒子の
運動が激しい初期段階では数値積分の精度が悪い。
どのような熱平衡状態実現させるかによってMD法の計算方法が異なっている。
(2)NVE一定のMD法
粒子数
を一定にして、粒子間のポテンシャルを設定し、初期条件を与えて
運動方程式を数値積分するとこの力学系は保存系である。
力学エネルギー
(運動エネルギー+ポテンシャルエネルギー)は一定である。
(ただし、差分化による誤差、まるめ誤差がなければ)
その他に
NVT一定(粒子数
、 体積
、温度
を一定にしたシミュレーション)
NPT一定(粒子数
、 体積
、温度
を一定にしたシミュレーション)
といったMD法がよく使われる。これらは実際のシミュレーションで使われる
発展した方法である。発展的な方法なので、説明はこの程度にどどめる)
(3)時間平均
力学量の平均(これが実験の測定値と比較する量)
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(163) |
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(164) |
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サンプル数を増すほど統計精度は良くなる。
インターバル
を大きくとるほど、
位相空間(
または
)の
広い範囲を考慮したことになる。
力学量
の分散
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(167) |
分散を計算しておくと統計誤差を知ることができる。
時間平均と粒子平均を区別なく記号
を
用いる場合がある。
(4)温度
系の粒子運動の激しさを表す。
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1粒子当たりのポテンシャルエネルギー
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その他に、力学エネルギーの保存具合を知るために、運動エネルギーおよび
ポテンシャルエネルギーを必ず計算する必要がある。
モニターリング
平均
は、熱力学では内部エネルギーと呼んでいる量に対応する。
(5)圧力
運動方程式
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(175) |
をかけて時間についての平均を計算する
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(182) |
ビリアルの定理
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(194) |
2体間ポテンシャルの場合
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(195) |
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(197) |
問:式(196)を導出せよ。
状態方程式(まとめ)
理想気体の状態方程式
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(198) |
ビリアル展開式(カマリン-オネスの状態方程式)
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(199) |
ファンデルワールス(van del Waals)の実在気体の方程式
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(200) |
(6)局所構造
各粒子の配置は時々刻々変化して行くが、その変化の仕方は無規則なものでは ない。温度、圧力といったマクロな(巨視的な)物理量に依存して、 ミクロな(微視的な)各粒子のお互いの配置に一定の性質が存在する。 そのような性質を局所構造と呼ぶ。ここでは代表的な物理量だけを学習する。
動径分布関数
1つの粒子のまわりの距離
の位置に存在するもう一つの粒子の平均的な
分布を表す関数
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(201) |
のとき
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(202) |
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(203) |
の計算法
の刻幅を
と決めて、粒子間距離
のサンプルデータ
に対して
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(204) |
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(205) |
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(206) |
結合角分布関数
構造因子