計算科学による貢献

自然現象を解明する手段には、実験・観測によるもの、理論によるものと2つのカテゴリーが主なものであった。人類史上1940年代に初めての計算機が開発されて以来、計算機性能が急速に向上し、実験と理論の中間に位置する研究手段が発達してきた。すなわち、計算機シミュレーション(計算科学)によるものである。単に与えられた方程式を解くだけでなく、計算機上で実験を行ってしまう手法である。最近では、計算機を構成するシリコンデバイス上で、実験・測定を行うこのような手法のことを、短く「イン・シリコ(in silico)」と呼ぶこともある。また第一原理と称して経験的パラメータを用いないで(非経験的に)計算実験を行うことも盛んになっている。このことにより、実験と理論の橋渡しという計算が、それだけでなく計算機シミュレーションの独立性もどんどん増大している。

今回発表された研究成果は計算科学による結果にヒントを得て、研究が進められた。測定結果と計算結果をお互いに検証しながら進めることにより、見通しのよい研究計画のもとで研究成果が上がったことに重要性が高い。ますます計算科学は、その重要性が増すとともに、自然現象の再現、理解、そして予測、さらにはデザインと人類の幸福に高度に貢献する学際学問に成長しつつある。