計算物理とは?

カーボンナノチューブ

-計算機シミュレーションによる物性学(計算物理)-

計算機シミュレーションの方法を用いれば従来にないきめの細かい物性学を達成することができるようになります。計算機シミュレーションは物理、化学、生物、地学、工学、薬学など科学のほとんどあらゆる分野になくてはならない道具となっています。

計算機シミュレーションを共通の足場におく計算科学は、理論科学、実験科学に次ぐ第三の科学とも目されています。従って計算科学の特長は、(1)従来型の個別科学を横断するグローバルサイエンスであり、(2)スーパーコンピュータなどの計算機を実験道具として用いる実証学問です。

シミュレーションの言葉の意味は"ものまねをする"ということになりますが、事実最近までのシミュレーションの成果は実験結果を説明するとか、理論予想を検証するとかが多かったわけですが、現在および今後の計算機シミュレーションの真価は、予見的、発見的なことにあります。つまり、計算機シミュレーションを通じて新しいことの発見を行うということです。

計算物性研究室の歩み

(第一期)

樋渡先生

物性理論研究室の正式な発足の年月は必ずしも明確でない。第一期(1966年頃)を境に物性理論研究グループらしきものができたように思う。当時はスタッフ三人の専門領域もバラバラであったが、学生(4年生の講座配属と院生)の入口としての形は一応整っていたと記憶する。スタッフの主な研究分野は以下のようであった。

(第二期)

研究室に顕著な変化が現れたのは、高須昌子(東京大学大学院理学系研究科修了)助手を迎え入れた頃である。これを第二期とすることにしよう。この時期には計算物理学(第三の物理学と呼ぶ人達もいた)の研究が大分盛んになり出した。これ迄はとても解明することが不可能であった複雑な系、複雑なプロセスを、計算機シミュレーションの方法によって試みる研究が新鮮で魅力的なものとして多くの物性理論研究者に受け入れられるようになった。当物性理論研究室もこの分野の研究に精力的に入って行ったと考える。

(第三期)

高須先生

次いで、小田竜樹(大阪大学大学院基礎工学研究科修了)助手を新しく迎え入れた頃を第三期と呼ぶことにする。これを境に物性理論研究室は名実共に計算物理学研究室となったと考えてよい。研究の対象も固体、液体、アモルファス、高分子、クラスター等々と研究の守備範囲を広げ、計算手法も、分子動力学、モンテカルロはもとより、電子状態をとり入れた量子系のシミュレーション等計算物理学研究の拠点を形成するようになった。

(第四期)

シリコン

平成8年4月に物性理論研究室のスタッフ全員(三人)は物理学教室から抜け出して、理学部に新しく誕生した計算科学科に移ることとなった。この頃を第四期と呼称することにする。その後も当分の間は内容的にはさしたる変化もなかったが、この頃からは計算物理学から計算科学に呼称も視野も変わったように思う。

(第五期)

2004年4月に新しく斎藤峯雄(NEC)教授を迎え入れ現在に至るが、これを第五期と呼称することにする。研究内容も物理と化学の両(あるいは中間)領域を視野に入れる体制が一応整った。

(第六期)

小田先生

2006年、樋渡教授が名誉教授となり、石井 史之氏が助手(2007年4月より助教)として新たに加わる。

(第七期)

高須 昌子准教授が、東京薬科大学・生命科学部の教授に転任し、教員3名により研究室を運営する。

(第八期)

金沢大学理工学域数物科学類計算科学コースの第一期の学生が、計算物性研究室に配属になり、研究体制も一新された。斎藤教授、石井准教授の2名で当研究室を運営する。

(第九期)

斎藤教授が名誉教授となり、石井教授が当研究室を運営する。博士号取得者が40名に達する。

(第十期)

金沢大学理工学域数物科学類がプログラム制に移行してから最初の学生が研究室に配属された。山口 直也氏が助教に着任して、教員2名で研究室を運営する。